【登場人物】 ■伊野川 拓海 ♂   宮口高校に転入してくる。料理が好き。でも行動に移せないヘタレ。 ■上原 友和 ♂   甘いものが好き。調子がよくいつも斜め上にズレる。あだ名はウエハース。 ■川島 祐介 ♂   料理部部長。中華が好き。いつも白衣を着ている。テンションがアメリカーンな人。 ■金子 麻衣子 ♀   イタリアンが好き。料理に信念を持っているが、今の料理部では諦めている。 ■佐々木 勝也 ♂   揚げ物好き。料理に関してとてもまじめ。技術は伴ってはいない。 ■小林 俊彦 ♂   部活管理官。無駄に突っ込みが好きな人。むかし料理部だった経歴を持ち、現在はなぜか料理部を快く思っていない。 ■桜井 友美 ♀   生徒会長。右腕の小林と一緒にいることが多い。一見やさしそうに見えるが…… 【出てこない登場人物】 ■丸山 翼 ♂   伝説の先輩・料理の神様・料理部の創設者。   ……と、部長の川島が崇めている人物。   劇中には一切出てこない。謎の人。 ○駅のホーム 電車から降りてくる沢山の人々。 ○改札 改札を出てくる人々。 その中に伊野川拓海の姿。 カジュアルな服を着て、手には紙を持っている。 紙には手書きの地図。 地図を少し眺めて歩き出す伊野川。 ○道 紙を片手にキョロキョロ歩いている伊野川。 目の前には高校の制服を着て歩いている人が数人。 伊野川 「ラッキー」 その後をついていく伊野川。 ○料理部部室 制服の上に白衣を羽織り、頭にはパーティー用の帽子を被っている川島祐介。 川島 「さあー、残り2時間、はりきってまいりましょー!」 周りにはせわしなく動いている上原友和、金子麻衣子、佐々木勝也。 部屋は綺麗に飾りつけされ、テーブルには紙皿や紙コップなどの準備。 川島 「あ、そこの飾りつけいいね」 部屋を歩きながら喜ぶ川島。 川島 「そういえば料理はどうする?」 麻衣子 「後で」 上原 「麻衣子ー、今年は何作ってくれるの?」 麻衣子 「(睨んで)君らが好きなもの」 きつく皮肉を込めて言う麻衣子。 上原 「ひー、怖い怖い」 おどけて笑う上原。 それをあきれた目で見る麻衣子。 その後ろに見える黒板に書かれた「カウントダウンパーティー」の文字。 ○校門 校門の前に歩いてくる伊野川。 伊野川 「ここか」 校舎を見上げ、気づいたように腕時計を見る。 伊野川 「駅から……10分か」 校門から中に入る伊野川。 ○料理部部室 慌ただしくパーティーらしき準備をしている川島、上原、麻衣子、佐々木。 川島はなんかビニールからタッパーの準備をしている。 麻衣子 「じゃあ買出し行ってきます!」 川島・上原・佐々木 「んー」 部屋のドアに走る麻衣子。 ドアに手をかけ、開ける。 次の瞬間何かに接触、のけぞる。 ドアの向こうには伊野川がいる。 伊野川 「おあ! ……と、大丈夫?」 麻衣子 「だ、誰?」 川島 「新入部員だろ?」 伊野川 「え? な!? 違うって」 麻衣子 「(遮って)本当は?」 伊野川 「本当は、って」 川島 「ようこそ新入部員の、加藤君」 伊野川 「は?」 麻衣子 「部長は黙ってて! (伊野川に向かって)それで?」 伊野川 「えーと、今度転入してくる伊野川です。どうもよろしく」 笑顔で麻衣子に手を差し出す伊野川。 とっさに横から出てきて、伊野川の手をとる川島。 川島 「ようこそ料理部へ! 部長の川島だ!」 伊野川 「!?」 麻衣子 「(川島に向かって)伊野川君、引いてるよ」 川島 「まさかぁ! (伊野川に向かって)伊野川ぁ、なんか料理ができる雰囲気がプンプンするぞー。いいねいいね、いい腕だ! 鍋とかちょろいだろ?」 川島の熱気に押されて廊下の壁にぶつかる。 伊野川の手を離さない川島。 川島 「もちろん入部は大歓迎だ! いま入部届けを出してやるからな。年齢は? いま何歳? 生まれてから何年? 転校生っていってたよね、どこからきたの? おつかれでしょう。わが料理部で休んでいきなさい」 まくし立てる川島の肩越しに見える上原、麻衣子、佐々木に目で助けを訴える伊野川。 麻衣子 「ドンマイ」 肩をすくめて、手を広げるジェスチャーをする上原。 おもちゃの伸びる笛で、哀愁を表現する佐々木。 ○オープニング   タイトルバック ○料理部部室 紙コップや紙皿を準備している上原と佐々木。 川島はタッパーを洗っている。 ○廊下 並んで歩いている伊野川と麻衣子。 麻衣子 「悪いね、パーティーの買出しつき合わせちゃって」 伊野川 「んー、いや別に料理するの好きだし」 麻衣子 「あれ? さっきの様子だと料理部がいやそうな顔してたけど」 伊野川 「……あれは、あの、その気迫に押されたっていうか」 ○店 伊野川の持つカゴにスナック菓子をテンポよく入れていく麻衣子。 麻衣子 「ねえ」 伊野川 「ん?」 麻衣子 「どうして私服なの?」 伊野川 「まだ新しい制服できてなくて。前の学校の制服じゃ目立つかなって」 麻衣子 「私服のほうが目立つよ」 伊野川 「って、まだ菓子買うの?」 カゴに増え続けるスナック菓子の山を見る伊野川。 ○道 菓子の入った袋を持って歩く伊野川と麻衣子。 奥のほうに白衣を来たまま走ってる川島が見える。(さりげない程度に) 伊野川 「今日は料理部のパーティー?」 麻衣子 「うん。なんでしょう?」 伊野川 「誕生日?」 麻衣子 「おしい」 ○料理部部室 ドアを開け入ってくる伊野川と麻衣子。 手には菓子がたくさんはいった袋。 と、そこには両手にタッパーを掲げる川島。 川島 「新しい部員! ようこそ!」 驚く伊野川。 麻衣子 「それはもう終わった」 するりと川島を抜けて部屋の中へ入る麻衣子。 よく見ると川島のタッパーにはご飯が大量に。 川島 「ユーアーネーム?」 伊野川 「ネーム?」 川島 「イェウ!」 伊野川 「マイネームイズ――」 言いかけたところで伊野川を奪う上原。 上原 「お疲れさまー。まぁまぁ座った」 部室のイスに伊野川を座らせる上原。 川島 「あー、取るなよお」 素に戻る川島。 上原 「もうテンション戻したら?」 川島 「だって新入部員がきたからワクワクなんだもん」 部室を眺める伊野川。 上原 「だから新入部員じゃないって。なあ」 伊野川を見る上原。 伊野川 「え? ああ」 いきなり話しかけられ視線を戻す伊野川。 伊野川 「入ろうかな。料理部」 ○廊下・部室前 並んで歩いてる生徒Aと生徒B。 上原(オフ) 「今、なんと?」 伊野川(オフ) 「だから料理部に――」 川島(オフ) 「あああああああああああああ!!」 突然の奇声に驚く生徒Aと生徒B。 ○料理部部室 タッパーをテーブルに置き騒ぎ出す川島。 うるさそうに耳をふさぐ麻衣子。 麻衣子 「うるさい!」 驚いてイスから立ち上がってしまう伊野川。 川島 「落ち着け! 落ち着けぇぇ!」 頭を抱えて騒ぐ川島。 上原 「お前が落ち着け」 川島 「いいかいいかいいか、いいか! そう簡単に入部を決めちゃいかん」 伊野川の両肩を押さえる川島。 伊野川 「え? え!?」 上原 「さっきまで勧誘してたくせに」 川島 「それはそれ、これはこれ。だ! こういうことはちゃんと考えたほうがいい」 伊野川 「料理好きだから入部するよ」 川島 「だからよく考えて」 伊野川 「じゃあやめる」 川島 「ああん、それはだめ!」 伊野川 「じゃあ入る」 川島 「冷静に考えろ」 伊野川 「じゃあやめる」 川島 「そ、それだけはご勘弁を!」 二人のやりとりを見てる上原の顔。 上原 「(このやりとりを見ながら)……なんだこれ」 ○廊下 【生徒会室】のプレート ○生徒会室 机につっぷしてる桜井友美。 横に座って書類をみている小林俊彦。 小林 「起きてる?」 友美 「ん」 小林 「ほんまに?」 友美 「ん」 小林 「いつから?」 友美 「いま」 小林 「みんな帰っちゃったよ」 友美 「うそ!?」 顔を上げ周りを見る友美。 友美の顔を凝視する小林。 小林 「ここ寝跡ついてるで」 手で自分の額らへんを指す小林。 額を隠す友美。 友美 「みんなは?」 小林 「んーとね、それぞれ部活監査。抜き打ちの」 立ち上がって書類をしまう小林。 友美 「お疲れ様です。部活管理官」 小林 「あくびしながら言われてもな」 軽く笑う二人。 急に真顔になる小林。 友美 「どうした?」 小林 「料理部……」 首をかしげる友美。 小林 「誰も監査に行きたがらないっちゅうやつ?」 友美 「じゃあ監査はそこだけなし?」 小林 「あー、俺が直接あとで行く……」 友美の隣に座る小林。 友美 「大丈夫?」 小林 「大丈夫……大丈夫や」 うつむき加減の小林。 (いま書いたのはここまで。続きはいつか公開) やなせ http://amusing.blog18.fc2.com/ 2007.04.06